営業部門の管理職は知っておきたい、営業メンバーの退職理由
営業部門の管理職は、営業成績を上げることと同じぐらい、人材の確保が重要な課題となっています。そこで今回は、営業職に就く人たちの退職理由などから退職者の実情を把握し、職場環境改善につながる情報をお伝えします。
営業職を辞めたくなった理由は「給料が安い」や「長時間労働」
厚生労働省が行った「雇用動向調査」によると、2022年度の就業者全体に対する離職率は、15.0%でした。職種ごとの統計は出ていませんが、営業職は他の業種に比べて離職率が高いと言われています。
営業職の退職に関しては、こんな調査結果もあります。
2021年、日本労働調査組合は20〜49歳の男女531名の営業職を対象に、「営業職の退職動機に関するアンケート」を実施しました。それによると、退職を検討したことがある営業職は80.8%、現在転職もしくは独立に向けた活動をしている人は58.9%という結果が出ています。営業職を辞めたくなった理由の1位は「給料が安い(32.4%)」、次いで「長時間労働(30.1%)」、「モチベーション維持(29.4%)」となっています。
日本労働調査組合は過去に同じようなアンケートを会社員全体に向けて行いましたが、そこでは退職理由の上位に「職場の人間関係」がランクインしました。しかし営業職に限った先述の調査では、職場の人間関係に相当する「コミュニケーションが苦手」「上司が嫌い、苦手」は上位には来ておらず、退職理由の傾向は会社員全体とは異なる結果になっています。
それは、総合求人サイト「エン転職」が職種を問わず行った「本当の退職理由についてのアンケート」で、上位2つに「人間関係が悪い」と「給与が低い」という結果が入っていることからもわかります。
営業職の辛さナンバー1はやはり「ノルマ」
営業職が置かれた状況をもう少し詳しく見ていきましょう。先ほど紹介した「営業職の退職動機に関するアンケート」では、営業職で辛いと感じたことについても聞いています。その結果、辛かったことの第1位は「ノルマ」で36.3%、次いで「お客様の理不尽さ」と「クレーム対応」が同等で8.8%という結果になりました。
ある程度は想像のつくことですが、やはりノルマの辛さが圧倒的な理由となっており、数字を上げないことには周囲が納得しないという営業ならではの厳しい現実を物語っています。
では、営業職の負担を軽くするにはどうすれば良いのでしょうか。
営業職の負担を軽くするには
営業職の負担を軽くするには、1人ですべての業務を行わず、適材適所に人材を配置して、いかに分業化できるかが鍵になってきます。
近年、SaaS業界を中心に、セールスフォースが提唱した営業体制のモデル「The Model」を導入する企業が増えてきました。The Modelでは、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「外勤営業」「カスタマーサクセス」の4つの部門に分け、「各部門の情報を可視化・数値化し、それぞれの部門の特性や専門性を最大化することで生産性を最大化する」というビジネスモデルを提唱しています。
具体的には、マーケティング部門は見込客の獲得、インサイドセールス部門は見込客の育成と案件発掘、外勤営業は商談管理と受注、カスタマーサクセス部門は活用支援と契約継続を担います。
ただ、どんな企業でもThe Modelを当てはめればいいというわけではありません。事業内容によってベストな分業の形は変わってくるので、まずは自社の事業を分析し、最適な形を探す必要があります。
分業化に営業代行も
分業化は、役割分担をした上で各部門が十分な連携を取っていくことがポイントになってきますが、もしも人手不足やノウハウ不足で長時間労働に陥りそうな場合は、一部を営業代行に委託するという手もあります。
営業代行は、新規顧客開拓やテレマーケティングはもちろん、DMや広告作成、マーケティング活動、顧客ニーズの分析、コンサルティングなど、網羅している業務は多岐に渡ります。
営業代行には、固定報酬型、成果報酬型、複合型の3種類があり、費用は契約形態によって異なります。売上や成果の有無に関わらず一定の報酬を支払う固定報酬型は、日当2.5万円〜3万円程度が相場。アポイントメントや受注の成立、売上額などに応じて支払いが発生する成果報酬型は、クロージング(成約)までを請け負う場合は売り上げの3~5割程度、アポイントメントの獲得をゴールにする場合は1件当たり1.5万円~2万円程度が相場です。固定報酬型と成果報酬型を組み合わせた複合型は、25〜50万円程度が相場となっています。
参考
営業ツールの導入も視野に
少しでも部下の負担を軽くして業務の効率化を図るには、営業ツールを導入するという方法もあります。オンライン化やITツールの導入はコロナ禍で一気に進みましたが、それでもまだ着手できていない部分があるかもしれません。
顧客情報を一元管理して適切なアプローチを行うCRMツール、案件や商談ごとに情報を記録するSFA(営業支援システム)、マーケティング業務を自動化して業務効率を高めるMA(マーケティング・オートメーション)などの営業ツールは導入できているでしょうか。
HubSpotが実施した「日本の営業に関する意識・実態調査2024」では、CRMを導入している企業は36.2%という結果が出ています。「顧客情報の管理方法が明確でない」と答えた企業は3割を占めており、まだまだ闇雲に営業を行っている企業が多いことがわかります。
また、昨今注目されている生成AIの活用も業務効率化につながります。実際、HubSpotの「日本の営業に関する意識・実態調査2024」でも、約5割の営業職が生成AIの活用理由のトップに「業務効率を上げるため」を挙げています。しかしそれにも関わらず、「営業活動のために直近生成AIを活用したことがある」と答えた法人向け営業部のセールス担当は、わずか8%にとどまっているのです。
個々の能力が上がれば自ずと業務効率は良くなりますが、プレゼン資料の作成などには積極的に生成AIを活用したり、日々の業務でITツールを使いこなすことも必要なのではないでしょうか。
まとめ
今回は営業メンバーの退職理由と、少しでも退職を回避する方法をお伝えしました。営業は成果を出すことも重要ですが、時には退職者を出さないことを念頭に、職場環境改善について考えてみてはいかがでしょうか。