営業プロセスは分業すべき?その特徴と課題を解説
日本の法人営業といえば、ひと昔前までは営業担当者が企業を訪問し、見込み顧客の開拓から商品やサービスの売り込み、成約までを一貫して担当するスタイルが主流でした。しかし近年は、営業のプロセスを分業化する「欧米型」、部分的に分業する「ハイブリッド型」などが増えてきています。そこで今回は、日本企業の営業スタイルをタイプ別に紹介し、その特徴と課題を紹介します。
昭和の時代から脈々と受け継がれてきた「従来型」
もはや説明不要と言っても過言ではない従来型の営業スタイル。①見込み客獲得→②見込み客の育成・選定→③提案・商談→④受注・成約→⑤LTV施策の5つのステップを、1人の営業担当がすべて行う一気通貫型がいわゆる従来型です。見込み客を獲得するために電話やメールなどでアプローチし、見込み客が獲得できたら商品やサービスについて説明。商談の場ではニーズのヒアリングも行い、それに対する商品やサービスを提案します。もちろん契約後のフォローアップも営業担当者の役割です。
幾度もやり取りを重ねた上で成約にこぎつけますが、このような営業プロセスは各営業パーソンへの負担が大きく、効率も決して良いものとは言えません。時間がいくらあっても足りず、セールストークのうまさによって営業成績が左右されることもあるでしょう。
近年はインターネットとテクノロジーの進化によって営業の業務が複雑化し、一方で便利な営業支援ツールも数多く生まれました。そのような背景も手伝って、営業プロセスを分業するという考え方が生まれたのです。
個々の業務を分業化して営業職の負担を軽くする「欧米型」
欧米では、営業のプロセスにおける分業や役割分担が随分と前から進められてきました。アポイントの獲得や顧客への訪問など、本来1人の営業担当が担ってきた営業プロセスを細分化するのが分業型ですが、業務の分け方は企業の業務内容によって異なります。
日本の営業が分業型に舵を切り始めたきっかけの1つに、セールスフォースが提唱する営業体制のモデル「The Model(ザ・モデル)」の存在があります。The Modelでは、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス(内勤営業)」「フィールドセールス(外勤営業)」「カスタマーサクセス(顧客の成功支援)」の4つの部門に分け、「各部門の情報を可視化・数値化し、それぞれの部門の特性や専門性を最大化することで生産性を最大化する」というビジネスモデルを提唱しています。
具体的には、マーケティング部門は見込客の獲得、インサイドセールス部門は見込客の育成と案件発掘、外勤営業は商談管理と受注、カスタマーサクセス部門は活用支援と契約継続を担います。営業プロセスが細分化されることで、いわゆる営業部隊(フィールドセールス)は受注の可能性が高い顧客との商談に注力でき、営業効率もアップ。個々のスキルに磨きがかかり、組織全体の営業生産性が向上します。SaaS業界を中心に、近年このThe Modelを導入する企業が増えてきました。
ただし、分業化に取り組んだものの、日本ではまだ馴染みの薄い仕組みゆえ、ノウハウ不足でうまくいかないという課題を抱えている企業も多くあります。
インサイドセールスとフィールドセールスに分ける「ハイブリッド型」
営業スタイルの中には、飛び込み営業や直接訪問といった昔ながらの営業活動(フィールドセールス)に、ITツールをはじめとしたデジタル技術を取り入れた非対面の営業スタイル(インサイドセールス)を加えた「ハイブリッド型」と呼ばれるものもあります。
分業型の項でも出てきましたが、インサイドセールスの本来の意味は、顧客の元を訪問せず、電話やメール、チャットなどを駆使して非対面で営業活動を行い、見込み顧客との関係を築き、商談の機会を創出する活動を指します。見込み顧客が商談化した場合は、商談を担当するフィールドセールスに引き継ぎます。
フィールドセールスは、顧客の元を訪問し、提案、商談、受注を行う営業手法のことで、インサイドセールスから引き継いだ顧客を訪問し、受注までを担う外勤営業です。従来の一気通貫型の営業では、1人の担当者が見込み客リストの作成から商談まですべてを行っていましたが、インサイドセールスとフィールドセールスの2つに分けることで効率化が図れます。
コロナ禍以降、日本でもこのハイブリッド型を取り入れる企業が増えてきました。HubSpotが実施した「日本の営業に関する意識・実態調査2024」によると、売り手全体のインサイドセールスの認知率は2023年の時点で47.4%と、2020年の調査から継続して増加しています。一方、インサイドセールスの導入率は2020年から継続的に増加していましたが、2022年から大きな変化は見られず、2023年は41.7%となっています。
分業化のメリット
営業のプロセスを分業化すると、社内に人手やノウハウが不足していたとしても、部分的にアウトソースし、営業代行に委ねるといったことも可能になります。営業代行が網羅している業務は、新規顧客開拓やテレマーケティングはもちろん、DMや広告作成、マーケティング活動、顧客ニーズの分析、コンサルティングなど、多岐に渡ります。
依頼することで当然コストはかかりますが、より効率の良いアプローチをすることができ、かけた費用以上のものを回収できるというメリットがあります。
まとめ
今回は、営業プロセスの分業化について紹介しました。ひと昔前に比べて営業プロセスの分業化が進んでいるとはいえ、企業の規模や業種によって向き不向きがあります。今回紹介した例をもとに、自社にはどのようなタイプがマッチするのか、考えてみてはいかがでしょうか。